RE100宣言の背景と、日本が取るべき次の一手とは
 ―高まる再エネ需要を無駄にしないために―


日本気候リーダーズ・パートナーシップ(Japan-CLP)事務局


 諸外国に比べて遅れ気味だと評されていた日本の再生可能エネルギー(以下、再エネ)移行に進展が見られ始めた。そのひとつの象徴が、100%再エネでの事業運営を目指す『RE100』加盟企業の増加である。『RE100』は、国際NGO・The Climate GroupがCDPとのパートナーシップのもと主催するグローバルなイニシアティブで、2018年9月現在、Google、ネスレ、Appleなど世界的に影響力のある企業152社以上が加盟している。

 日本企業初の加盟は2017年のリコー。同年に積水ハウス、アスクルが加盟した。その後、9社が新たに加盟し、現時点での日本のRE100加盟企業は計12社となっている。日本の加盟企業が10社に達した7月には、日本経済新聞朝刊トップに「使用電力 再生エネに転換 富士通など全量 10~30年で」と題する記事が掲載された。掲載時点での10社の電力消費量の合計は概算で約120億kwhと、日本の総電力消費量の約1.3%に相当する。大口需要家である企業の態度変容により、複数の電力小売事業者からRE100対応プランが発表されるなどエネルギー供給側も事業として行動変容を起こすことが世の中に広く認識されつつある。

 持続可能な脱炭素社会を目指す企業グループである日本気候リーダーズ・パートナーシップ(Japan-CLP)は、公式パートナーとして日本企業のRE100加盟を支援してきたが、企業の再エネ利用に関する機運の高まりはJapan-CLP会員企業内でのRE100加盟企業の増加(2018年9月現在、日本国内のRE100加盟企業12社のうち11社が加盟)や、新規問い合わせ件数の伸びからも強く感じられる。  


 RE100は「遅くとも2050年までに事業活動における全ての電力消費を再エネ電力にする」と宣言し、状況を報告することが活動の主軸である。個社ではなく加盟企業全体で大口需要家として再エネ100%宣言をすることで、より効果的にエネルギー供給側や政策に働きかけることが狙いだ。例えば、現在の加盟企業152社の再エネ需要は合計で、タイの年間電力消費量178TWhを超える184TWhにも上る。供給側にとっては超大口顧客、国や自治体としては公益と判断すべき規模であろう。実際に、2050年を待たずして、すでに世界各地で、RE100宣言をきっかけに、供給側の事業方針や投資、政策が変わり、それを受けて新たなイノベーション創出やコスト低減が生まれ、より経済合理性が高まる好循環が生まれている。

 宣言の背景にあるのは、気候変動が地球環境・社会へ及ぼす脅威と、国際的な再エネ主流化やサプライチェーンの変化など企業経営上の危機意識だ。日本では、気候変動は環境保護やエコといった文脈で語られることが多いが、国際的な共通認識としては、経済問題でもあり、食糧問題でもあり、健康問題でもあり、人道問題でもある。例えば、本年7月、国連安保理がこの7年間で初めて、気候変動と国際紛争の関連について協議すべく議会を召集したのは象徴的だ。国連事務総長は、気候変動が情勢の不安定化や紛争を招く安全保障リスクだと認識している。

 事業観点では、気候変動は市場、顧客、資金調達、サプライチェーンなど、活動の前提を大きく揺るがすリスクとなりうる。こうした事態に対処し、また根本原因を解決するには、CSRに留まらず、事業を通じての貢献が必要だと気づいた企業が増え始めているのだ。その認識のもと、世界的には再エネ普及は需給双方の目指すところとなり、石炭やガスと比べても遜色がない、もしくはより低コストになる事例も見られ、さらに企業活動や投資が進むという事象がすでに見られている。


<日本における課題とJapan-CLPからの提言>
 RE100を契機に再エネを求める声が高まりつつある反面、日本では再エネはまだまだ割高だ。このままでは世界的なエネルギー転換に遅れを取ることでの機会損失が膨らみかねず、今までの実績や新規投資が座礁資産と判断される可能性すらある。そうした事態の打破には、実効性のあるソリューションや政策が欠かせない。企業には、適切なエネルギー選択を意識し声を上げると同時に、日本の高い技術水準を活かして、国内外の脱炭素化を事業として積極的に推進することが求められるのではなかろうか。

 一方で、そうした企業活動を包括的に支える政策的枠組みは必須であろう。欧州などに比べ、再エネ普及にあたっての地理的な制約などがあるのは事実だが、だからこそ、国が積極的に脱炭素市場の拡大と好循環創出に取り組むべきだとJapan-CLPでは考えている。気候変動対策は今後のあらゆる事業活動おけるリスクでありチャンスだ。一般の事業と同様に需要の声を聞き逃すことなく、具現化することが経済成長に繋がると認識いただきたい。

 Japan-CLPとしても、国内外のRE100宣言企業にとって日本が重要な拠点や取引先であり続けられるよう、需給双方で連携の上、ソリューション開発に取り組むとともに、再エネの普及、低価格化を促す政策提言を行っていく。

▲ページのTOPへ △コラム一覧表へ △J-SUSトップページへ
 Copyright 2007-2018 サステナビリティ情報審査協会 All right reserved.